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     2021年度
    趣味の音楽鑑賞、観劇などの様子、今まで長く関わって来たスポーツ・体育に関することなどを掲載しています。   
     
    下伊那体育研究会講演会
     2022-01-09/スポーツ・体育
   

 令和3年(2021年)12月8日(木)長野県飯田市を中心とする下伊那体育研究会からの依頼を受けて、ZOOMによる講演会を行いました。研究会の大澤研究委員長からの依頼によるもので、いただいた演題が「楽しい体育の授業づくり」でした。ベテランから若くて経験の乏しい先生までいらっしゃるということでしたので、あらかじめ、基本的な内容を中心にパワーポイントの資料を用意しました。事前アンケートによる質問を沢山いただいていましたので、それにも出来るだけ触れるように資料づくりを行いました。同時に、私が教員をしていた頃の授業風景のDVDも用意して当日を迎えました。質問まで含めて約1時間30分の講演会でしたが、参加された30名ほどの先生方は熱心に聞いて下さいました。

 竹之下休蔵先生が提唱され、昭和50年頃に佐伯年詩雄先生によって授業化された「楽しい体育」は、昭和から平成にかけて盛んに授業のあり方研究がされ、全国の体育の先生方はその新しい考え方で授業研究に取り組みました。しかし、自分が行う授業でそれなりの成果を収め、「楽しい体育」を絶賛して傾倒していく先生方と、その考え方には同調できずに離れていった先生方の両極に分かれました。分析してみますと、「楽しい体育」に関する理念を追求して勉強や研究を続けた人は良い授業を行うことが出来た一方で、「楽しい体育」の授業マニュアルを求め、その方法の習得のみに執着した人は、離れていく結果になったのだと私は感じています。「楽しい体育」はその行い方(方法)よりも理念が大切です。

 「楽しい体育」という言葉が文科省の学習指導要領に導入された頃、ゆとり教育が盛んにもてはやされていました。その後その反動と、OECDの学習到達度調査(PISA)で、日本の子どもが世界ランキングの順位を下げたことなどが重なり、学力の低下が叫ばれました。ゆとり教育が批判され、それに同調するかのように「楽しい体育」も次第に向かい風に晒されるようになりました。しかし、そのPISAの調査の反省から、2020年からの学習指導要領では単なる知識習得の学習ではなく、主体的な学習が重要視されることになりました。この主体的な学習こそが、「楽しい体育」が追求してきたことそのものです。「楽しい体育」では運動特性の学習の他に、自発的・自主的な学習を標榜してきました。

 「楽しい体育」を長年研究してきて感じることは、主体的(自発的・自主的)な活動に対する指導は、授業マニュアルだけではどうしようもないということです。その理念をもとにしながら、変化する目の前の子どもの姿から教師が学び、子どもの視点から学習を創り上げていくことしか方法がないからです。時代が「楽しい体育」の学習の仕方を必要としてきたように感じます。この考え方はどの教科にも通用する、これからの学習理論の中核に座ると思います。そういう意味で、下伊那体育研究会の講演会は、古くて新しいテーマであったように思います。

     
    全国体育学習研究協議会長野・松本大会  
     2021-11-14/スポーツ・体育  
   

 11月6日(土)第66回全国体育学習研究協議会「長野・松本大会」(略して全体研松本大会)が行われました。Webによる開催でした。ふつう全体研の協議会は、全国から集まった会員が、小・中・高校の授業参観をしてから、3泊4日、もしくは2泊3日でグループワークを中心として体育学習のあり方について様々な話し合いをします。今年は100名ほどの会員がネットで参加しました。コロナの影響で1日だけの全体研松本大会でした。公開授業は松本市の寿小学校、芳川小学校、筑摩野中学校、菅野中学校、田川高校の各学校で前日に行われ、それを360度カメラで撮影したものを早朝から見ることができるようにしてあり、会員はそれを見てから参加しました。

 前日の授業公開は、長野県学校体育研究会松本大会があり、それと兼ねて行われました。県の大会はリアル参加で開催されました。私は現在は県の会員ではありませんが、長野県在住の全体研の運営委員ということでお誘いをいただいたので、県の総会からはじまり、鈴木秀人先生の問題提起、筑摩野中学校、菅野中学校での授業参観、そして、授業研究協議会に参加してきました。

 半年ほど前に全体研の研究委員会から、もし連絡があったら菅野中学校のダンスの相談にのってほしいと言われていていましたが、10月27日(水)に菅野中学校からメールが届き、29日(金)、11月2日(火)、4日(木)の3日間、松本の菅野中学校(創作ダンス)、芳川小学校(表現運動)へ2度ずつ訪問して事前の授業参観をして、帰宅後に改善してほしい点などをメールで送りました。

 当日参観した菅野中学校のダンス授業は、生徒たち皆が楽しく、心を解放して即興の創作ダンス「スポーツ」を踊っていました。協議会でも、参観の先生方からは絶賛の言葉が聞かれました。筑摩野中学校の体育理論は始めての参観でしたが、生徒たちは真剣にスポーツの必要性を考え、話し合い、発表していました。

 前日までそのような参加をしていたので、当日の全体研松本大会では積極的に発言できました。喋りすぎて同じグループの会員の皆さんに迷惑をかけてしまったかもしれません。反省です。

     
    ミュージカル「レ・ミゼラブル」2021年公演  
     2021-10-05/ミュージカル  
   

 昨日(令和3年10月4日())、まつもと市民芸術館主ホールにて、12時開演のミュージカル「レ・ミゼラブル」2021年公演が行われました。チケットを購入してからしばらくして、コロナ禍の影響で公演の中止が囁かれはじめ、第5波がピークになった頃には諦めなければならないのかと不安にもなりました。幸い、沈静化してきて無事当日を迎えることができました。正にこの日は2021年公演の大千穐楽。満杯に埋め尽くされた会場一杯に、オープニングの音楽が大音量で流れ始めました。

 10年くらい前に、やはりまつもと市民芸術館主ホールで、このミュージカルを観ました。その時はまだ現役の教員で、ミュージカルを指導していたこともあり、何か得るものはないかとの視点で観劇していたのだと思います。退職してミュージカル指導から遠のいた今となったからそう感じたのか分かりませんが、とにかく自分自身でも考えられないくらい感動しました。歌に、演技に、ダンスに、台詞に、大道具・小道具・衣装に、照明に、生オケの演奏に、しかし何といっても、ストーリーに感動させられました。演出も以前観たときとはずいぶん変わっていましたし、森公美子さんぐらいしか同じキャストの人はいませんでした。

 大千穐楽だからか、役者も気合いが入っていたように思いました。客層も、拍手のタイミングや、カーテンコールの際には旗などの小道具まで用意している、おそらく何度も観ている人が多かったと思います。大千穐楽ならではの、最後の役者の挨拶にもありましたが、キャストに選ばれながら、この公演の出演がなかった役者も観劇されていたようです。そういえば、駐車場には品川、足立、大宮など、県外ナンバーが多く停まっていました。

 役者(主役、ジャン・バルジャン役の吉原さん)が最後の挨拶の中で、人間、最期に大切なのは金でも名誉でもない。ただ、人に知って貰うこと、人の記憶に残ることが生きた証になる(多少ニュアンスが違うかもしれませんが)というようなこと言われました。今日の大千穐楽は、そのキャストの面々は、おそらく満杯になった会場の全ての人の心に強烈に残ると思いました。

 まだ興奮醒めやらぬ状況で書いていることもあり、文章が支離滅裂だと思います。次回のレミゼも観たいです。森さんが出演回数でギネスを狙うと言っていました。また、森さんにお目にかかれることも楽しみにしています。

     
    早稲田大学グリークラブサマーコンサート
     2021-10-03/合唱  
   

 メールで案内が届いたので、初めての経験でしたがイープラスでチケットを購入しました。その演奏会の様子が、昨夜(2021年10月2日)アーカイブ配信されました。これは8月26日に鎌倉芸術館大ホールで録画されたものです。

 その演奏会は、早稲田大学グリークラブのサマーコンサートです。早稲田大学グリークラブのコンサートは、10年ほど前に杉並公会堂で行われた送別演奏会を聴きに行った時以来でした。

 はじめに50名弱のメンバーが、おなじみの白いステージ衣装を着て、元気いっぱいに「早稲田大学校歌」、そしてクラブソングの「輝く太陽」を演奏しました。以前と違っている点は、ステージ後ろに必ず掲げてあったグリークラブの旗がなかったことと、全員が大きな合唱用のマスクをしていたことです。このコロナ禍で、授業もままならない中、練習を重ねて本番を迎えられたことに感動しました。

 指揮は黒川和伸氏、ピアノ伴奏は松原賢司氏と小嶋千尋氏の連弾で、曲目は「二つの祈りの音楽-男声合唱とピアノ連弾のための-」(宗左近氏作詞、松本望氏作曲)でした。大変に難しい曲でした。練習時間が限られていたせいか、多少荒削りな感じも受けましたが、男声合唱のハーモニーが無観客の会場一杯、綺麗に響き渡っていました。ステージはこの一曲だけでしたが、大曲で、聴き応えは十分にありました。

 最後に「遙かな友に」が聴けるかと、楽しみにしていましたが、それもなく静かに終わりました。誰もが思うことですが、一日も早く気楽にホールに行ける日が来ることを願います。ただ、このような事態にならなかったら、早稲田大学フリークラブの演奏を聴くことはなかっただろうと思うと複雑な気持ちにもなりますが。

     
    “楽しい体育”との出合い
     2021-09-26/スポーツ・体育
   

 私が“楽しい体育”という言葉を聞いたのは、昭和53~55年頃、最初の勤務地(中学校)でのことでした。その頃、それを熱心に研究されている先生方(柳沢重夫先生など多数)が近隣の小・中学校に勤務されていて、“楽しい体育”という言葉は風の便りで何となく私の耳にも届いてはいました。

 しかし、「“楽しい体育”なんて、当たり前のことじゃないか、体育は子どもたちが好きな教科No.1だし、何故今更そんなことを言うのだろう。」程度にしか理解していませんでした。楽しい体育などと言うより、体育では技術や戦術の内容をしっかり学習させることの方が重要だと考えて、その比較研究の成果を研究会で発表したりしていました。(比較研究などと言っても、当時の私は楽しい体育については全く分かっていなかったのですが。)

 深く関わるようになったのは昭和56年4月、初めての転勤があり、赴任した中学校は小規模だったために体育科の教員が私ひとりでした。しかも地域の研究授業の当番校として、体育で公開授業をすることが決まっていました。

 子どもたちの技術が優れ、活気に満ちあふれた授業をいくつも指導されていた柳沢重夫先生に教えを請い、自分には全くプレイ経験がなく、指導経験も乏しく、最も苦手としていた“ダンス”の指導を克服したいとの思いから、ダンス領域を公開授業に選びました。

 この選択が、その後の私の人生と言えば大袈裟かもしれませんが、私の生き方に大きな影響を与えることになろうとは、その時は公開授業のことが精一杯で、全く気づきませんでした。

 ダンス領域の中から“ロックのリズムダンス”の単元学習を行いました。平成10年になってから学習指導要領に登場するリズムダンスを、かなり先行して行ったわけです。毎時間、ダンスの授業が終わると自己反省をして、その夜、柳沢先生に電話をしてご指導をいただき、それらを活かしながら工夫をしてまた授業をする。そんなことを5~6回繰り返し、公開授業本番を迎えました。

 当日は、名古屋大学名誉教授の重松鷹泰先生にご指導をいただき、子どもの活動量や溌剌とした動き、子どもたちの満足そうな笑顔に対してお褒めの言葉をいただきました。

 この公開授業の準備を通して、柳沢先生から教えていただいた様々なことが、“楽しい体育”との出会いでした。

     
    幸せになる権利とスポーツ  
     2021-09-20/スポーツ・体育  
   

 8月末、箱根で行われた「佐伯体育ゼミ」の夏合宿に参加しました。その中で佐伯先生から、次のようなお話がありました。「スポーツ基本法ができて、スポーツは権利だと書いてあります。スポーツを通じて幸せになることは、日本国民の権利だと書いてあります。それを体育できちんと教えましたか?そして、弱い子どももその権利があるということを、皆にきちんと知らせましたか?そこが、第一の出発点です。上手な子どもだけがスポーツを楽しむ権利があるわけではありません。しかし、そういうことをきちんとやっていないと思います。」私は、このお話を聞きながら、恥ずかしさのあまり次第にうつむいてしまいました。

 スポーツ基本法ができた頃、教員として体育を教えていた私は、扱わなければならない内容や技術を教えることに一生懸命で、佐伯先生がおっしゃる「第一の出発点」を知らせることなど、全く気づきませんでした。「なぜ体育を教えるのか」、「体育が存在する意味」という事柄と大きく関連する、最も大事なことを、全く扱うことなく過ぎていたのです。そして、私が関わってきた多くの教員も、この大切な事柄を扱っていないのではないかと思いました。

 四十年弱に及ぶ体育の教員生活を終えて数年が経過した今となっては、「時すでに遅し」です。せめて、今、体育を教えている先生方には、この「第一の出発点」から体育をはじめてほしいと願います。